くみやま岡本病院の回復期リハビリテーション病棟では、日常生活動作の改善と自宅・社会復帰を目指して回復していく過程を、先輩看護師たちが日々支えています。
今回のインタビューでは、看護部長・看護師長、そして現場で働く先輩看護師の方々に、「なぜこの病院・病棟で働くのか」「回復期看護のやりがい」「患者さんとの関わり方」について伺いました。

急性期から回復期へ ― それぞれが選んだ理由
―皆様のご経歴と、現在の病院でご勤務されている経緯をお伺いします。
看護部長/中井さん:
急性期病院で約8年間勤務していたのですが、急性期では治療後に患者さんが転院してしまい、最後まで関われないことに物足りなさを感じるようになりました。その後患者さんを継続して支えたいという思いから、急性期と回復期の両方を担う前身の病院(伏見岡本病院)に入職し、約16年間勤務しました。
その後、回復期を中心とした当院の開院にあたり、岡本記念病院などでの経験を経て、開院時に看護部長としてこちらに着任しました。
看護師長/明田さん:
急性期病院で約25年、大阪で勤務していました。京都に戻るタイミングで、次のステージでは、もう少し患者さん一人ひとりと丁寧に関われる環境で働きたいと考えるようになりました。そこで伏見岡本病院に就職し、その後、病院の移転に伴って現在の病院に勤務することになりました。
画像:左から山崎さん、島野さん
島野さん:
新卒で急性期病院に入職し、6年間勤務していました。
急性期では患者さんの入れ替わりが激しく、一人ひとりと関わる時間が短い環境でした。
治療や手術を中心に、医師主導で回復し退院していくケースが多く、忙しさもあって次第に業務についていくことが難しく感じるようになりました。
そこで、患者さんとじっくり関わり、回復していく過程を間近で見られる環境を求め、回復期リハビリテーション病院へ転職しました。現在で7年目になります。
山﨑さん:
私は前職では急性期病院で約2年間勤務していました。
急性期では患者さんの経過が非常に早く、一人ひとりとじっくり関われる時間が少なく、また、急性期から回復期リハビリ病棟に移られる患者さんが多かったのです。
患者さんが治療や術後どのように過ごし、在宅復帰していくのかを知り、支援したいと思い、こちらへの入職を希望しました。
―島野さん、山﨑さんは、急性期から回復期リハビリ病棟に移られて感じた違いや、回復期ならではの学びなどはありますか?
島野さん:
急性期病院では医師主導の診療を支える役割が中心で、患者さんとじっくり関わる時間は限られていたと感じています。
一方、回復期病棟では療養生活の支援が中心となり、入院期間も長いため、患者さんと継続的に深く関わることができます。
脳や頭部の疾患を抱え、言葉での意思疎通が難しい方も多く、表情やしぐさなど非言語的なコミュニケーション力が身につきました。
また、在宅復帰を目指す患者さんが多いため、ご本人だけでなくご家族への支援も重要になります。
長期入院によるストレスやご家族の受け入れ体制など、患者さんの希望だけでは退院先を決められない現実に直面することもありますが、だからこそ一人ひとりの思いに寄り添いながら退院支援を行うことの大切さを実感しています。
山﨑さん:
急性期では受け持ち患者さんの人数が少なく、関わる時間も限られていました。
回復期病棟では患者さんとの関わりはより深くなった一方で、受け持ち人数は増え、退院までを見据えた継続的なケアが求められます。
日々のケアに加えて、再発予防(二次予防)や、ひとつひとつの看護行為の意味を考えながら実践する必要があり、より主体的に看護を組み立てる力が身についたと感じています。
―患者さん一人一人にじっくり関われる点が回復期ならではですね。
島野さん:
そうですね。急性期に比べて個別性が非常に高いと感じています。
患者さんがこれまでどのような生活を送ってきたのか、
発症前の生活背景、ご家族の状況も一人ひとり異なります。
そのため、回復期病棟では、より個別性に特化した看護が求められると感じています。
画像:くみやま岡本病院公式サイト(https://okamoto-hp.or.jp/oka3/)
「人は関わりで回復していく」という実感。「家に帰る」というゴール。
―「回復期病棟では、個別性に特化した看護が求められる」印象深い言葉ですね。これまで看護師として働く中で印象に残っているエピソードがあれば教えていただけますか。
看護部長/中井さん:
最も印象に残っているのは、学生時代の看護実習で担当した脳梗塞の患者さんとの経験です。75歳くらいの方で、それまで大きな病気をされたことがなく、初めての病気が脳梗塞。
右半身麻痺が残り、発症から1週間ほどのタイミングで私の実習が始まりました。
当初は障害を受け入れられず、リハビリにもなかなか前向きになれない状態でした。
3週間の受け持ち期間を通して関わる中で、少しずつ障害を受容され、
前向きにリハビリへ取り組まれるようになっていきました。
実習後も同じ病院に就職したため、その後も関係は続き、
最終的には歩いて退院される姿を見届けることができました。
退院時に
「君がいてくれたから、今の自分がある」
と言っていただいたことは、今でも忘れられません。
この経験から、
「看護師の関わりによって人は回復していく」
という実感を得て、それが私の看護の原点になっています。
だからこそ、患者さんのゴールまで見届けられる回復期看護に強く惹かれ、
今もその思いは変わっていません。
―その経験が、今のキャリアや価値観にもつながっているのですね。明田さんはいかがでしょうか。
看護師長/明田さん:
急性期で働いていた頃、退院調整が重視され始めた時期に印象的な経験がありました。
医師からは「この患者さんは自宅に帰るのは難しい」と判断されていたケースでした。
でも、ご本人の「どうしても家に帰りたい」という強い思いがあり、
支援を重ねて自宅退院を実現したことがありました。
その後、在宅でのご様子や写真を拝見した際、とても良い笑顔をされていたんです。
「居たい場所で暮らせることは、こんなにも人を笑顔にするんだ」
と強く感じました。
その時は主治医も驚いていましたが、
「帰れない症例はないのかもしれない」
と思うようになり、退院支援・退院調整の大切さに気づいた経験でした。
その後、慢性期を経て回復期に関わる中で、「家に帰る」というゴールに向けた支援ができていることに、大きなやりがいと手応えを感じています。
―今につながる、大切な原体験なんですね。
画像:左から看護師長/明田尚子さん、看護部長/中井裕征さん
チームで支える回復期医療。患者さんからもらう元気。
―山﨑さん、島野さんの印象に残ったエピソードはありますか。
島野さん:
現在入院されている患者さんの中で、特に印象に残っているのは50代の女性の患者さんです。入院当初はほとんど意思疎通が取れず、寝たきりの状態でした。
回復期リハビリ病棟ということもあり、リハビリスタッフが様々な手段で立つ練習を行ったり、意思疎通が難しい中でも手足の運動を継続したりすることで、運動機能は維持されていました。
その後、医師が脳に水が溜まっていることに気づき、手術で排出したことで、意識状態が一気に改善しました。意思疎通が困難だったのが、口の動きで意思表示ができるようになり、車椅子に乗れるまで回復し、現在は歩行練習にも取り組まれています。
ここまで回復されるとは正直思っていなかったため、その姿から私自身が大きな元気をもらっています。
―悪い状態から関わってきた患者さんが、回復していく姿を見られるのも回復期の魅力ですよね。
島野さん:
本当に「回復期」という言葉がぴったりだと思います。回復には、もちろん医師や看護師の力も重要ですが、リハビリスタッフや退院支援の相談員、栄養士、薬剤師など、多職種が連携して関わりながら患者さんを回復へ導いていきます。さまざまな専門職が一つのチームとして患者さんを支えられる点は、非常にやりがいのある職場だと感じています。
山﨑さん:
私は脳の疾患で入院されていた右麻痺の患者さんのケースが印象に残っています。
入院期間が長く、退院に向けて自宅改装や補助器具など、一人ひとりに合わせた工夫が必要でした。最初は転倒があったり、車椅子での移動が中心だったりしましたが、家族の協力もあり、リハビリスタッフと連携して支援を行いました。
意思疎通が難しい方でしたが、様々な手段で少しずつコミュニケーションを取り、その結果、最終的に無事自宅に退院されました。本人の努力はもちろんですが、リハビリスタッフと協力し、患者さんの回復を支える看護のサポートが少しでも役立てたのではないかと思います。
患者さんのために、同じ方向を向ける職場
―みなさんのそれぞれのご経験が、くみやま岡本病院の特色につながっているように感じますね。
看護部長/中井さん:
当院には「回復期で看護をしたい」という思いを持った看護師が多く集まっています。
急性期のように治療中心で関わるのではなく、回復期ならではの視点で患者さんと向き合いたいという考え方が共通しているため、看護師同士の目線は比較的そろっていると感じています。
日々の業務でも、
「患者さんにとって何が一番よいか」
「退院されるときに、どのような関わりや看護ができるか」
といった患者さん目線を大切にしながら、両病棟とも取り組んでいます。
また、自分たちの役割をしっかり理解したうえで看護にあたっている点も特徴です。
さらに、伏見の病院時代から続いている基本スタイルとして、多職種連携を重視しています。
特に回復期病棟では看護師の配置が13対1と少ないため、ケアワーカーとの協働は欠かせません。
急性期病棟のように看護師主体で動く体制とは異なり、看護師とケアワーカーが一緒になって患者さんを支える体制が整っている点は、当院ならではの大きな特徴だと思います
画像:くみやま岡本病院公式サイト(https://okamoto-hp.or.jp/oka3/rihaka.html)
チームで支えるフォロー体制
―回復期リハビリ病棟の1日の業務の流れを教えていただけますか。
島野さん:
日勤は以下のようなスケジュールです。
| 8:00 | 出勤、情報収集 |
| 8:30 | 申し送り |
| 8:50 | スタッフ全員でおむつ交換 |
| 9:00 | 患者さんのバイタルサイン測定や点滴管理、全身状態の観察 |
| 10:30 | 受け持ち患者さんのバイタル測定 |
| 11:30 | 順番に休憩に入り、ペアで相談しながら業務を調整 |
| 12:00 | 昼食の配膳・内服薬の配薬・口腔ケア(13時頃まで対応) |
| 13:40 | 看護師とリハビリスタッフとのユニットカンファレンス(患者さんの目標や退院調整について話し合い) |
| 14:00 | おむつ交換,状態変化のあった患者さんの観察、ベッドサイド・病棟内での簡単なリハビリ介入 |
| 15:00 | 主治医、薬剤師、栄養士など多職種が参加するリハビリカンファレンス(治療やケアの方向性を共有) |
| 16:30 | 夜勤者への申し送り |
| 17:00 | 業務終了 |
| (夜勤) | 1か月に5回程度 |
―業務が多岐にわたるのですね。日勤帯の中で特に忙しい時間帯はいつですか。
山﨑さん:
一番忙しいのはお昼前後です。看護師の人数が少なくなる時間帯であり、リハビリの一環として患者さんにベッドから離れて食事をしてもらう必要があるためです。さらに、血糖測定などの業務も重なるため、この時間帯は特に慌ただしくなります。
―現在の受け持ちは何名くらいですか。
山﨑さん:
日勤では7〜8名を受け持ち、夜勤では20〜25名ほど担当しています。
―入職されてからどれくらいで受け持ちをされる形になるのですか。
山﨑さん:
私は入職後最初の1か月は、隣の岡本記念病院で研修勤務していました。その間も、入職1週間後くらいからは数名の患者さんを一人で担当し、残りの4名ほどは先輩と一緒に受け持つ形で関わっていました。
―業務量はどのように感じられていますか。残業にもなることがありますか。
山﨑さん:
私は急性期からリハビリ病棟に来て3年目ですが、まだ自分で手が回っていない部分もあり、残業は多少あります。ただ、残業を少なくできるよう、声かけなどのフォローはしてもらえているので、調整はしやすい環境だと感じています。
―業務が立て込んだときのフォロー体制や、相談し合える環境は整っているんですね。
山﨑さん:
はい、整っていると思います。入院患者さんの状況や退院予定などは、病棟マップにわかりやすく記載されていて、受け持ち患者さんにペアがついているため、頻繁にコミュニケーションを取りながら、業務が埋まっていないか確認し合うことができます。そのため、業務の調整は比較的スムーズにできています。
―看護師さんの年齢層はどのくらいでしょうか。
看護部長/中井さん:
現在は新規開院や新しいスタッフの入職もあり、年齢層は以前より若くなっています。
とはいえ、中心となっているのは40代・50代のスタッフで、20代・30代は多くありません。その分、OJTの場面では、ベテランスタッフがどのように動いているかを間近で見ることができ、「先輩の動きが参考になる」という声も聞いています。
―相談先が分からず不安に感じる看護師さんもいると思いますが、その点はいかがでしょうか。
看護部長/中井さん:
中途採用の看護師も多く在籍しているため、伏見の病院時代から中途入職者向けの簡単なチェックリストを作成しています。新人教育とは異なり、キャリアや経験年数に応じて、教育というよりもOJTを中心に、一緒に業務を覚えていく形を取っています。
ペアで行動する期間も、個々のスキルや経験に合わせて調整しており、中途採用の方でも安心して業務に入ってもらえる環境づくりを意識しています。そのため、中途入職の方にとっては比較的なじみやすい職場だと思います。
画像:くみやま岡本病院公式サイト(https://okamoto-hp.or.jp/oka3/rihaka.html)
「やりたい看護」を実現できる環境へ
―最後に、看護部長、看護師長にお伺いします。お二人が「一緒に働きたい」と思える看護師像について教えてください。
看護部長/中井さん:
患者さんファーストの視点を大切にしながら、退院支援・退院調整を一緒に考えていける方ですね。
患者さんがどこで、どのように生活したいのか、その思いに寄り添いながら、望まれる退院先を共に考えられる看護師と働きたいと思っています。
誰かに判断を委ねるのではなく、自分自身が患者さんをしっかり見たうえで考え、主体的に看護を実践できる方に来ていただけると嬉しいですね。
―「自分がやりたい看護ができない」と悩まれている看護師さんも多いと感じますが、その点についてはいかがでしょうか。
看護部長/中井さん:
そういった悩みを持つ看護師さんが、自分の考えを出せる環境をつくっていきたいと思っています。カンファレンスの場では、看護師だけでなく多職種とも意見を出し合いながら、「この患者さんにとって何が一番よいのか」を一緒に考えてほしいですね。
もちろん、やれること・やれないことはありますが、まずはみんなで考える姿勢を大切にしたいと思っています。
看護師長/明田さん:
回復リハビリ病棟では、「慈しみの心」を大切にできることが、とても重要だと感じています。迷ったときや気持ちが揺らいだときこそ、「患者さんファースト」という視点に立ち返って考えられることが、この病棟に向いている価値観だと思います。
私自身も、くみやま岡本病院に来てから、より一層その考え方を大切にするようになりました。
最初から「無理だ」と諦めるのではなく、
「どうしたらできるだろうか」
「どうすれば実現できるだろうか」と
一緒に考えていけること、その思いを共有できることが大切だと思っています。
患者さんのためにできることを、チームで考え続けられる環境でありたいですね。
画像:くみやま岡本病院の看護師の皆様とミーティングのご様子を撮影
これから一緒に働く看護師さんへ
―回復リハビリ病棟で働くお二人からは、これから一緒に働く看護師さんへメッセージをお願いいたします。
島野さん:
回復期リハビリテーション病棟は、患者さんの回復過程を間近で感じられる病棟です。
とてもやりがいのある職場だと思います。
山﨑さん:
回復期リハビリ病棟では、退院後の生活も考えながら一人ひとりの患者さんと向き合うことができます。患者さんとのコミュニケーションを通して、その方の今後の生活に深く関わることができるのが回復期ならではのやりがいです。ぜひ、こうした経験をしてみてほしいと思います。
―忙しい中素敵なお話をありがとうございました!
【インタビュアー加藤のコメント】
急性期から回復期へ
患者さんの退院後の生活まで見据えた看護を大切にする方々が集まっている病棟だと感じました。
特に心に残ったのは、「患者さんにとって何が一番いいか」を皆さんが自然に口にされていたこと。
特別な言葉ではなく、日々のカンファレンスや連携の中に、その姿勢が表れていました。
患者さんの一歩一歩の回復に寄り添いながら、自分自身も看護師として大きく成長したいと思える方にこそ、ぜひ一歩を踏み出してほしいと思います。